【蜜のあわれ】感想や考察:実写版耽美幻想小説「蜜のあわれ」

こんにちは!

今日の映画は「蜜のあわれ」です!

こちらの作品は、二階堂ふみが金魚の役を演じることで話題になりました。また、故・大杉漣さんも出演していて、幅広い世代の方々が劇場へ足を運んだのではないでしょうか?

観終わった感想は、「幻想的で甘美な大人向けの映画」というかんじでした。

評価は星3です!

映画の基本情報

【監督】石井岳龍

【題名】蜜のあわれ

【原作】室生犀星

キャスト・登場人物

赤井赤子:二階堂ふみ

老作家の元で暮らしています。人間の姿をしていますが、実は彼女の正体は金魚。愛らしい表情で人間を魅了します。

老作家:大杉漣

女性に人気のおじいちゃん作家です。金魚を溺愛していますが、複数の女性と関係をもっているようです。彼の妻は寝たきりです。

田村ゆり子:真木よう子

かつて老作家に愛された女性です。誰かが会いたいと願ったため、幽霊として再びこの世に姿を現します。

丸田丸子:韓英恵

老作家の指導を受ける若い女性。

金魚売りの男

赤子の販売主。金魚を売って歩いている。

あらすじ

自分のことを「あたい」と呼び、まあるいお尻と愛嬌のある顔が愛くるしい赤子(二階堂ふみ)は、共に暮らす老作家(大杉漣)を「おじさま」と呼んで、かなりきわどいエロティックな会話を繰り返し、夜は身体をぴったりとくっ付けて一緒に眠る。

しかしなにやら様子がおかしい。赤子は普通の女とは何かが違う。
普通の人間には彼女の正体がわからず、野良猫には正体がバレてしまう。
そう、彼女はある時は女(ひと)、ある時は尾ひれをひらひらさせる真っ赤な金魚だったのです・・・。
そんな或る時、老作家への愛を募らせこの世へと蘇った幽霊のゆり子(真木よう子)が現れる。
老作家の友人・芥川龍之介(高良健吾)、金魚売りの男(永瀬正敏)が3人の行方を密かに見守る中、ある事件が起きて・・・。

(公式サイトより引用)

本編の感想

本編は4つの章から成っていて、各章は独立しているのではなく全て同じお話を時系列でまとめた、長編小説の「章」のようなものでした。

よかったところ

金魚ダンス

何度も登場するダンスシーンですが、観衆にこの子は金魚なんだ、と思わせるような魅力的で見事なダンスでした。自由で、お茶目で、幼くて、でも美しい。尾びれの動き、きっと色々研究したのでしょうね。ひらひらと動くドレスのスカートが、まるで水の中にいる金魚を見ているかのような錯覚を起こさせます。製作者のこだわりを感じました。

二階堂ふみのキュッとしたおしりも、とても綺麗でした。金魚の表現にも一役買っていました。

SE

赤子の移動や感情の変化を表現する際の音=SEですね。とても良かったです!

落語や歌舞伎においては、ドロドロドロという音が流れるのが「不思議なことが起こる」サインです。それのようなかんじでしょうか。

金魚の音ってまさにこれ!ってかんじの音ですよね。金魚の「金」という字から、鈴のような金属音を連想するからでしょうか。そして音の組み合わせも、まるで水の中で動いているような、見事なものでした。金魚が人間の姿をしているなんて現実ではとてもありえないことですが、でも、この音を出しながら動くことには納得がいきます。音響担当さん、見事。

化粧台

化粧台というのがとても良かったです。女であることの最高の表現ですよね。化粧台には鏡があって、白粉があって紅があって、女性を女性たらしめる神聖な存在です。鏡には、霊力や魔力のようなものが宿っているというイメージもあります。呪いの鏡とか魔法の鏡とか、結構よく聞く話ですよね。

また、紅をさす姿も良かったです。化粧台にあったということは、もしかしたら、奥さんか前の女性が使っていたものなのかも知れません。同じ唇を重ねたという他者との接点の表現とも捉えることができそうです。

化粧は大人の女性の特権だと思います。初夜を過ぎ、大人として生き代わった赤子を表現するのに、化粧台は最適だなと思いました。

あまりよくなかったところ

金魚の具現化

やはり尾びれの扱い方は、役者陣みんな難しいようでした。金魚のひれではなく布の触り方のように見えてしまったのが残念です。

それから衣装も、しっとりしたツヤのある素材の布でも良かったかなあと思います。金魚の尾の線1つ1つはハッキリと出ていて美しかったですが、触るとやはり違うなと思いました。水に濡れた冷やかな触り心地などが見た目にわかると、よりリアルな擬人化になったと思います。

二階堂ふみの演技

美しさをたたえつつ幼さの残る絶妙な素晴らしいものでしたが、艶(あで)やかさがもう少しあれば完璧だったと思います。

ふわふわしていて少し上ずった声はキャラクターによく合っていました(ふみさん見事です)が、私は所々に垣間見える小さな命の儚さや、女の厳しさのにじむ鋭い声の演じ分けも見たかったです。あの老作家を魅了するような溢れるほどの女としての魅力が、身体のラインを映すだけではやはり勿体なかったと感じました。

合成シーンの遠近感

ゆり子おば様の映るシーンで特に気になりました。距離感の割に、大きくないか?とか、小さすぎない?と思う箇所が幾つかありました。また、川を渡るシーンでは、消えるスピードが速すぎて違和感が残りました。

あと、夜に部屋を暗くしてベッドでゴロゴロしながら鑑賞したのでゆり子おば様の最後あたりのシーンちょっとだけ怖かったんですけど、私の部屋のコピー機がガガガガッと音を立てて突然勝手に更新を始めたのでめちゃくちゃビビりました(笑)

今年の秋1番最初の恐怖でした(これ書いたの立秋の次の日)。

印象に残ったシーン

赤子とゆり子が老作家のことを「男は……」と語るシーン。同じ男を愛した女同士だからこそ、というよりも、女の共通意識が合致した瞬間ですよね。2人の距離がぐっと縮まるシーンです。

同じ1人の男に翻弄される2人の女。彼氏の浮気相手と協力して彼氏を追い詰めた、それで今も浮気相手と仲良し、なんて話しもあるくらいですから、そういう2人は本質的に似ているのかもしれません。

また、美しさと純真さ故に赤子が敵対視しているはずの女性達まで魅了してしまうのが、少し切なかったです。あまりの魅力に、女性であるゆり子からもキスされてしまう。ゆり子を驚いた表情で見つめる瞳は、わけがわかっていないような、悲しみをたたえているような、不思議な表情だったように感じました。

この映画を一言で表すと

「実写版耽美幻想小説」。漢字多めですね(笑)

原作は1959年刊行です。作者は大正から昭和にかけて活躍した小説家、室生犀星。

原作が幻想小説なので、金魚が人間の姿をしていたり、幽霊に触れたり、実世界ならハチャメチャなわけですが、文学としての美しさを上手く可視化した映画作品だと思いました。

まとめ

この映画、公開当時テレビで特集を見てからずっと観たいと思っていたのですが、当時多忙で劇場では観られず暫くしてから思い出して調べてみたらヒットしなかったんです。あれから2年ほど経ってしまっていました。まあ、絶対に検索がヒットしなかった理由はわかっています。

検索ワードが「土屋太鳳 金魚 映画」だったからです。

マジで土屋太鳳だと思ってました二階堂ふみも土屋太鳳もごめん。

二階堂ふみ良かったーー!土屋太鳳も、「累」で高評価だし!!(必死の取り繕い笑)

映画「蜜のあわれ」、主演は二階堂ふみさんです。大杉漣さんも出てます。是非お間違えなく(笑)