【木曜組曲】感想や考察:上質なミステリー小説映画版「木曜組曲」

こんにちは!

今日の映画は「木曜組曲」です!

この作品は数々の賞を受賞した作家、恩田陸さん原作の映画です。豪華女優陣の演技が原作の空気感を上手く演出していました。

見終わった感想は「恩田陸の世界観に引き込まれる作品だった!」

評価は星4です!

映画の基本情報

【監督】篠原哲雄

【題名】木曜組曲

【原作】恩田陸の小説『木曜組曲』

キャスト・登場人物

塩谷絵理子:鈴木京香

ノンフィクション作家。親族関係ですが時子と血は繋がっていません。

川淵静子:原田美枝子

時子とは異母姉妹で、静子の方が年下です。出版プロダクションを経営しています。

林田尚美:富田靖子

時子の姪っ子。ミステリー作家です。

杉本つかさ:西田尚美

時子の姪っ子。純文学作家で、賞も受賞しています。尚美とは異母姉妹。

綾部えい子:加藤登紀子

編集者。デビュー当時から時子の担当で、同居人でもある。

重松時子:浅丘ルリ子

天才女流作家。生前高い評価を受けたが、4年前に毒を飲んで死んだ。

あらすじ

4年前に謎の薬物死を遂げた女流作家・重松時子。彼女を偲んで毎年5人の女たちが時子の館に集っていた。しかし、今年は謎の花束が届いたことにより、いつもと雰囲気が変わってしまった。そして、彼女たちは時子の死について自らの推理を語りだす。

(Wikipediaより引用)

本編の感想

私、恩田作品が好きでよく読むのですが、小説の雰囲気がきちんと映画にも流れていて嬉しかったです。力のある女優陣の演技力の賜物でしょう。

よかったところ

演技

6人の女優の演技が、それぞれに素晴らしかったです。

登場人物たちは、名作家である時子の死について自分も何らかの関わりを持っていたと思いたいのです。普通なら殺人の疑いをかけられたら誰だって否定します。でもこの作品では、彼女たちの間に少し嬉しそうな、奇妙な空気が流れるんです。偉大な彼女が死んだとき、自分はその死に際に立ち会った。そして、自分が彼女の死の秘密を握っている。そんな甘い蜜のような状況が、彼女たちを酔わせているのだと思います。これも時子の策略なのでしょうか。

恩田陸の作品には、心地良い違和感が漂っているように思います。なんだか不思議なことを予感させる、読者を物語の世界に引き込む力があります。文字には劣りますが、映画でもその絶妙な空気感は保たれていました。これは、女優の力ですね!

役者は間(台詞の無い部分)で語れ、とよく言われます。空気感というのは、台詞より間合いで出す方が伝わります。出演者は全員そこが上手かったです。

映像の統一感

この作品の映像は、一貫して薄暗い印象を受けます。おそらく監督の狙いでしょう。サスペンスのような、不穏な空気の演出に成功していました。

食べ物を映すときも、ひょっとしたら誰かが毒を仕込んだんじゃないかとか、嫌な予感がするんです。えい子さんの料理、とっても美味しそうなのに。映像の色味が全体的に冷たく青白いかんじがして、作品の雰囲気づくりに成功していました。

音楽

バイオリンの音って、懐かしい気持ちにさせる効果もあれば、不安を煽る効果もありますよね。弦の張り詰めて危うくか細い感じが、旋律によって緊迫感に繋がるからでしょうか。音楽がとてもグッドでした。あの家の豪勢な食事や高級感ある家具と集まった彼女たちの雰囲気にもぴったりでした。

あまりよくなかったところ

死体の演出

死体の血!口からこぼれ出た血が、首が傾いている方向と逆(重力に逆らっていた)のが残念!!のたうちまわったことで逆になりました的な、わざと?とも思いましたが私は納得できやかった……。安っぽい殺人現場になってしまったような気がしました。

結末

事実なのか、回想シーンなのか、妄想なのか、その境目を曖昧にしたかったのだと思いますが、曖昧すぎて少し混乱してしまいました。個人的には、同時に出さないほうがいいかなあと思います。

時子が毒を飲んで死ぬのをもう一度見せたのは、「人は2度死ぬ」というのを表したかったのでしょうか。2度死ぬというのは、身体機能が停止した時と忘れられた時ですね。これはよく言われる話です。時子の家に集った彼女たちが、文字にして時子の死を描き始めたというのは、消化し始めたとも言えそうです。

でもそれにしたって、完全に殺さなくったって良いじゃんかと思う私。だって記憶にも本としても残るわけだから、彼女は2度目に死なないじゃないですか。彼女たちの異常性を強調したかったのでしょうか。うーん……私には満足いきませんでした。

印象に残った部分

五角形のテーブルを囲むという行為。とても印象深かったです。

時子が死ぬ以前からこの会合は開かれていたということになります。6人でどうやって囲むんだ?と疑問に思いました。でも、生前はこのテーブルを囲んでいたわけではなさそうです。ということは、きっと五角形のテーブルに何か意味があるのだと思います。

私の考察はこうです。日本史とかで出てくる一揆の署名に、傘連判状というのがありますね。傘連判状には、円状に署名することで誰が首謀者かわからなくするという狙いがあります。五角形のテーブルにもこれと同じような効果がありました。誰かをクローズアップすると、その人が中心人物のように見えてくるのです。平等に時子の死の責任を負っているように思えました。また、どの席からも相手の顔が見えるので、逃げも隠れもできないという「秘密」を明かすのには絶好の配置だと言えそうです。円にしなかったのは、個人として独立していることも示したかったからだと考えました。

五角形のテーブル、どこで買ったんだろう?笑

この映画を一言で表すと

「上質なミステリー小説映画版」というかんじでしょうか。

原作者の独特の空気感を上手く受け継いだ映画だったと思います!

まとめ

映画「木曜組曲」、女優陣の空気感がクセになるとても魅力的な作品でした!

原作ファンも納得の作品になっています!!是非観てみてください!!