【遠い空の向こうに】感想や考察:父と子の絆を感じる実話映画「遠い空の向こうに」

みなさんこんばんは!

今日の映画は「遠い空の向こうに」です!

鑑賞のきっかけは、英語の授業。すっごくかわいいおじいちゃん先生が細かく説明してくれたので、理解が深まりました!!

観終わった感想は、「きめ細やかに考え尽くされている映画」。

評価は星4.5です!!

映画の基本情報

【監督】ジョー・ジョンストン

【題名】遠い空の向こうに

【原題】October sky

【原作】Rocket Boys

キャスト・登場人物

ホーマー・ヒッカム:ジェイク・ギレンホール(吹替:三木眞一郎)

ウェスト・ヴァージニアの炭鉱の町コールウッドに暮らす高校生。成績はあまりよくない、普段から友人二人とふざけてばかりの彼でしたが、スプートニクの打ち上げを目撃してから夢を持ちます。彼は周りを巻き込みながら、ロケットの製作に取り掛かります。

ジョン・ヒッカム:クリス・クーパー(菅生隆之)

ホーマーの父。炭鉱で働いています。彼は管理職で、炭鉱でも信頼を受けるリーダーです。頑固で厳しいですが、愛情あるお父さんです。

クエンティン・ウィルソン:クリス・オーウェン(真殿光昭)

クラスで一番頭のいい男子生徒。超優等生ですが嫌われ者です。

ロイ・リー・クック:ウィリアム・リー・スコット(檀臣幸)

ホーマーの友達。

レオン・ボールデン:ランディー・ストリップリング(中博史)

ホーマーの友達。

ライリー先生:ローラ・ダーン(弥永和子)

ホーマーたちに科学コンテスト出場を進める先生。生徒思いの綺麗な先生です。

エルシー・ヒッカム:ナタリー・キャナーデイ(一柳みる)

ホーマーの母。将来は新婚旅行で行ったビーチに隠居することを夢見ています。

バイコフスキー:エリヤ・バスキン(水野龍司)

炭鉱の工場で溶接などの仕事をしていました。ホーマーたちに協力してくれました。

ジム・ヒッカム:スコット・トーマス(森川智之)

ホーマーの兄。アメリカンフットボールで奨学金のはなしがあり、大学進学が決まっています。

他多数出演

あらすじ

1957年10月ソ連から打ち上げられた人類初の人工衛星を見たアメリカ合衆国、ウエスト・ヴァージニアの小さな炭坑の町の高校生4人が、ロケット作りに挑戦する。ロケット作りを通して、時にはぶつかり、また励まされながら成長していく過程を描く。主人公の1人であるホーマー・H・ヒッカムJr(元NASA技術者)による実話を元に製作された。この作品中でホーマーが参加したコンテストは、インテル国際学生科学フェアとして現在も行われている。原作は主人公ホーマーによる著書「ロケットボーイズ」。 作品にはV-2を開発したヴェルナー・フォン・ブラウンも登場している。

(Wikipediaより引用)

本編の感想

まず、題名。日本語では「遠い空の向こうに」です。原題は「October Sky」ですが、原作は「Rocket Boys」という題名なんです。

何故原題と原作の題名が違うのかというと、これ、アナグラムなんですって!!文字を入れ替えて別の意味の単語にするやつ。私初めて聞いた時感動しましたよ!!

後からアナグラムのソフトウェアでやったらしいと聞いてちょっとがっかりしましたが……。(笑)

冒頭にも書きましたが、こちらは授業で鑑賞しました。そのため、おじいちゃん先生の詳しい解説つきです。こちらの記事は、ちょっとだけ先生のお話しをシェアしつつ書きたいと思います!

おじいちゃん先生は、日本語が超上手いイギリス人。なんと、25か国語を話せるそうです!

“This movie is why did I study Russian.(この映画は私がロシア語を勉強したきっかけだ。)”と言っていました。

この映画は実話を元に制作されたそうで、確かに劇的な展開は全くありませんでした。ロケットを作ることに青春をかけた少年たちの、とても感動的なストーリーです。

ロシアのことをもっと知りたいという気持ちから、先生はロシア語を習い始めたそう。

そして、映画はアメリカでは99年、日本で2000年に公開されたそうで、私たちが生まれたあたりだ〜!!って感激しました。

よかったところ

象徴的なカット

この映画、気を抜いていたら見逃してしまうほど細かく高い頻度で象徴的なカットが映し出されます。

【カメラワーク・シーンの構成】

例えば冒頭。カメラは人々の足元からの映像ばかり撮っています。これは、ロシアのロケット打ち上げ成功にアメリカの人々の精神が地に落ちていることを表現していると言えそうです。また、炭坑で働き、労働環境的、金銭的にも「地下で生きる」人々の暮らしぶりを表現しているものとも取れます。

他にもあります。それは立ち位置です。

ホーマーと父・ジョンの立ち位置が、ストーリーの進行に伴って逆転するのがとても気持ちよかったです。若干、差が以上に大きいところもありましたが、わかりやすく明快で良かったです。

また、シーンの見た目の構成としても、これはとても象徴的でした。

最初ホーマーが父親を見上げていたのに、中盤から終盤にかけては逆転します。立ち位置が、「尊敬・威厳」の変化を示しているようで、彼らの中の変化の表現としてとても巧みだったと思います。

他にもあります。

ホーマーが朝食で飲んでいるのはミルク。これはホーマーがまだ子供だということを表しているし、父親がロケットをゴミ箱に捨てるシーンも、少年たちの夢が絶たれたことを表現していると考えました。

演劇では小道具や大型装置など無くても、パントマイムや視線だけでそこにそれがあることを表現しなければいけないことがあります。でも、観客はそこを想像で補う。そして、それは成立します。信じること、そこにそれがあると疑わないことが必要です。演技や表現の本質はそこだと思います。

こちらの映画でも、監督の表現したいことについて同じことが言えると思います。意図的に象徴性を高めているように感じました。

【照明】

影の扱い方がとても素晴らしかったです。

ホーマーが父を見つめる表情のクローズアップ、父が炭坑を見つめる表情のクローズアップなど、顔に陰りがある=先行きに希望の無いことを表現しているのだと思います。

また、最後父が炭坑で事故に巻き込まれるシーンでは、母が壁に描いたビーチの絵を見つめますよね。このシーンでは、雨が降っていて、窓ガラスを伝う雨だれの影がまるで涙のようにも見えます。また、雨の影が壁にうつり1つの映像のようになっていました。これはビーチに隠居するという母の夢が流れ落ち消えることを予感させる効果にも繋がっていると思います。

【音響】

音響担当も良い仕事をしていました。音楽による表現も、とても良かったです!

同じ曲が複数回流れますが、シーンによって悲しげな印象を受けたり、感動的なイメージを与えたりと、色んな表情をもつとても良い選曲だったと思います。

また、炭坑を見つめる少年を映したとき、同じ音ばかりで変化のない旋律が流れたのも「上手いなあ」と感心しました。単調な旋律は、このあともずっと同じように、コールウッドの街で炭坑マンとして生きていく少年たちの将来を暗示しているようでした。

音の力でシーンがぐっとドラマティックになったり、コメディになったり、ホラーになったり、音響の力って大事だなと思います。「遠い空の向こうに」の音響、とっても良かったです!!!

あまりよくなかったところ

1番最後だけ!

1番最後に、打ち上げたロケットの軌道が映し出されるのですが、まっすぐ過ぎました!笑笑 本当にラストのところで当時の映像が出てきますが、あんなまっすぐじゃなかったんです。まあ、そうですよね。ロケットといっても高校生の独学による制作物なのですから、ちょっとくらい曲がります。軌道がまっすぐすぎて、事実に則しているかんじが薄れてしまったのがちょっぴり残念でした。

あとは良かったです!!!

印象に残ったシーン

ライリー先生から「内なる自分の声を聞く」という助言を受けて、森林火災の無実を証明しようとする直前。ホーマーが鏡の前で自分を見つめるカットがとても印象的でした。

鏡の中にはヘルメットを被って炭鉱へ向かおうとするホーマーがいて、隣にはフォン・ブラウン博士の写真が飾ってある。これは夢と現実の対比と言えます。そして、本物の(鏡の中ではない)ホーマーの顔は、映されません。やりたいこととやるべきこと、どちらを選ぶのか。「内なる自分の声を聞く」というライリー先生の言葉。心が動いたシーンでした。

この映画をひとことで表すと

「父と子の絆を感じる実話映画」。

原作者が伝えたかったのは、父と子の絆。それを、カットの構成、光や色の使い方、音響によって、明暗を表現しより鑑賞者の心に響く作品になっていたのが素晴らしかったです。

まとめ

25か国語を話せるというおじいちゃん先生、最近知ったのですがまさかの高校時代の同級生のお父さんでした!!(笑)

現在、「七人の侍」を英語字幕で鑑賞しています。東北訛りネイティブの私でも聞き取れないくらい日本語が難しいです(笑)

映画「遠い空の向こうに」は、映画的な”見せ方”が巧みなサクセスストーリーでした。

是非観てみてください!!